映画に魅せられた人々 第5回 箕輪 克彦さん 

読売ランド前駅近くにあるミニシアターの支配人である箕輪克彦さんと知り合ったのは、私が脳出血のリハビリ病院から退院し新百合ヶ丘に引っ越してからすぐ、2000年の春頃だったと思う。


当時箕輪さんは「新百合ヶ丘に市民映画館をつくる会」の代表格だった。代表格という意味は元々代表だったらしいのだが、自己主張と個性が強くあまり人と折り合って協調していくことが上手でない彼は代表を退くことになったようだった。


私が「新百合ヶ丘に市民映画館をつくる会」に入会したときは、しっかり者の女性・Kさんが「代表代行」を務めていた。箕輪さんはこの会の中心人物であるにもかかわらず、口の悪い女性会員から「くそ箕輪」と呼ばれていた。しかし、この「くそ」には愛情の響きがあった。みんな箕輪さんを認めていたからこそ、「なんで、そんなことも分からないの」と愛憎のこもった気持ちで「くそ箕輪」と呼んでいたのだ。

 

組織運営は下手な箕輪さんだったが上映作品を選ぶセンスはずば抜けていた。日本の時代劇オペレッタ映画『鴛鴦歌合戦』を熱心に語り上映したのは彼の功績だし、2000年から始まった宿敵「しんゆり映画祭」の野外上映に乗り込んで、夜空のもとで『遠い空の向こうに』という映画を上映し、観客の喝采をあびた。アメリカの炭坑町で宇宙を目指す少年たちの話は、星空の下、野外上映に集まった少年少女や元少年少女たちの心を捕らえた。

 

しかし、箕輪さんの企画する上映会の観客動員は惨憺たるものだった。よく借りた定員1010人の麻生市民館に100人動員するのも見たことはなく、いつも20~30人くらいの観客しか呼べなかった。打ち上げではいつも「誰もわかってくれない。いい映画なのになー!」と悪酔いするのが常だった。今から振り返ると広報/宣伝らしきことをあまりやっていなかった。せいぜい駅前でビラをまいたり、ビラを掲示板にはったりするくらいのことしかしていなかったから、客が集まらないのは当然だった。

 

私が「新百合ヶ丘に市民映画館をつくる会」に入会してから1年もたたないころ、箕輪さんは突然「新百合ヶ丘に市民映画館をつくる会」を解散して、読売ランド前駅近くに自分の映画館をつくると宣言した。噂によれば、箕輪さんは地主の息子で親の遺産で映画館をつくるらしいと聞いた。それは「筋」としては正しいことだし、「新百合ヶ丘に市民映画館をつくる会」は箕輪さんがつくった会なので、誰も文句を言わず従い、多くの会員は当時活動が盛り上がりつつあった「しんゆり映画祭」に活動の場を移した。私も箕輪さんに出資する金もなく、「しんゆり映画祭」に活動の場を移した。

 

「ザ・グリソムギャング」で箕輪さんは、孤高の"怒濤の進撃"上映を開始した。それは「ザ・グリソムギャング」のホームページで過去の上映記録をみていただけば、分かる。「痴漢電車」シリーズの上映から原田芳雄や石橋蓮司をゲストに呼んだ黒木和雄追悼上映まで、よくこんなマニアックな上映が続いたものだ」と驚かされる。

 

客席はたったの21席。ここで箕輪さんは仲間たちにも支えられながら特異な映画空間を作ってきた。しかし、先日フェースブックで箕輪さんの文章を読んでいたら、この愛すべき映画館も終わりに近づいていることが書かれていた。先日「アクション・シネマ・コンペティション」に出品された映画を観にザ・グリソムギャングに行った折りに聞いてみたところ、あと2年くらいで閉館するかもしれないという話だった。

 

そのとき思った。私も「しんゆり映画祭」で今は亡き野々川千恵子さんらと悪戦苦闘してきたが、箕輪さんがこの映画館で戦ってきた苦労とは比べものにならないだろうと。ザ・グリソムギャングの快進撃はこれからも続く!みんな、この映画館に足を運べ!

 

55日~6 北公次さんメモリアル上映会「急げ!若者」 

512 ザ・グリソムギャング10周年記念特別企画③ "70年代を生きた映画と人々"Vol.1 「ナッシュビル」&「ORANGING'79

519 ザ・グリソムギャング10周年記念特別企画③ "70年代を生きた映画と人々"Vol.2 「天国の日々」&「東京白菜関K者」

520 4回副音声付上映会 「天国の日々」

526 中島丈博、「祭りの準備」を語る

527 「その男、エロにつき アデュ~!久保新二伝」生コメンタリー付上映会

61 映画ファン感謝デー ワンドリンク付上映会 「妹」

62 ザ・グリソムギャング恒例"Wアンヌバースデー上映会" 「妹」&「ザ・スパイダースの大進撃」

63 井上順特集 「ザ・スパイダースの大進撃」&「JAZZ爺MEN」

69  "第十七回寄席 愚離粗無亭"俺たちゃ腐れ縁の巻"「マイキー&ニッキー」

610 ザ・グリソムギャング10周年記念特別企画③ "70年代を生きた映画と人々"Vol.3 「マイキー&ニッキー」&「ハッピーストリート裏」

616日~17 長谷部安春監督メモリアル上映会2012 「あぶない刑事(デカ)」

623日~24 「映画に逢いたい!」出版記念 「モスラ対ゴジラ」

630 

71 映画ファン感謝デースペシャル2本立て 「セコーカス・セブン」&「注目すべき人々との出会い」

77  5回 副音声付上映会(貸切)

78 ザ・グリソムギャング10周年記念特別企画④ 映画監督利重剛特集Vol.1 「ザジ ZAZIE」&「教訓Ⅰ」&「Empty night

714 復活!佐野和宏特集

716 ザ・グリソムギャング10周年記念特別企画④ 映画監督利重剛特集Vol.2 「BeRLiN」&「レンタチャイルド」&「見えない」

72829日日 '今年もクゥと会える!公開5周年記念'「河童のクゥと夏休み」上映会2012

84 祝!ザ・グリソムギャング10周年記念マンスリー① 「大脱走」他(予定)

85 6回副音声付上映会 「大脱走」(予定)

811 祝!ザ・グリソムギャング10周年記念マンスリー② 「ウエストサイド物語」他(予定)

812 7回副音声付上映会 「ウエストサイド物語」(予定)

818 祝!ザ・グリソムギャング10周年記念マンスリー③ 「いちご白書」&「ハロルドとモード/少年は虹を渡る」

91日~2 園子温監督最新作「希望の国」公開記念 「恋の罪」上映会

922日~23 工藤栄一監督十三回忌特集① 「十三人の刺客」

929日~30 工藤栄一監督十三回忌特集②・公開30周年記念・追悼神波史男先生 「野獣刑事(デカ)」ニュープリント版上映会(予定)


ザ・グリソムギャングのHP


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コメント(1)

大輔 Author Profile Page:

「遠い空の向こうに」=October Sky は僕も大好きな映画です。星空の下で見たらなお良かったでしょうね。ザ・グリソムギャング、気になって調べました。ロバート・アルドリッチ監督の「傷だらけの挽歌(1971)」ですね。箕輪さんの映画への愛情がひしひしと伝わってきます。

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