小田急線各駅飲酒 第5回 代々木上原

代々木上原はオシャレな街だ。近くには高級住宅街があるが、古くからの住民も多く、小田急線沿線では一番美味しい店が多いのではないだろうか。「ゆうばーる」「鮨勘」「ジーテン」「老四川飄香(ピャオシャン)」「とんかつ武信 分店」。昼飯時に会社のスタッフの女性たちと何か美味しいモノの食べに行くとき代々木上原まで足を伸ばすことが多い。

そんな代々木上原で私がのんびりと日本酒を飲みたいとき訪れるのが「笹吟」だ。
訪れると必ずスタッフやオーナーの成田満さんが笑顔で迎えてくれる。今回、取材で店を訪れて、成田さんの生まれは私と同じ昭和28年であることがわかった。以前は青山の方で西洋料理のレストランをしていたとのこと。道理で日本酒の居酒屋にしてはセンスが垢抜けている。

「笹吟」の開店は1996年と15年前。私が福岡から東京に転勤で帰ってきた年だ。ちょうど地酒ブームが起こったころではないだろうか。店の看板にも「お惣菜と地酒の店」と書いてある。
席数は38席と "中箱"だが、店としての一体感は保たれている。私はこの店でカウンターに座り、成田さんに目の前で日本酒をついでもらい、その日本酒に合う「おつまみ」を聞いて食べるのが好きだ。先日「太平海」を飲んでいるときに出してくれた「タコとキュウリの酢の物」も美味しかった。
そういう店だから客単価は普通の居酒屋よりも少し高いが、こういう店が流行るのも酒文化の発展につながるのでないだろうか。連れ合いと一緒にきている夫婦が多いし、85歳になる私の母親もこの店のファンだ。

酒場には、店によっては時に「華やかな雰囲気」も必要だと思う。以前この店のテーブル席で母親と飲んでいたとき、ちょうどリーマン・ショックの頃だったと思うが、店全体がなんとなく「暗い」雰囲気に包まれていた。突然、成田さんのいるカウンターの方向で「ポーン」という音とともに「ワー」という歓声が上がった。そして、発泡した日本酒が天井まで吹き上げる光景が目に入ってきた。「秋鹿 霙もよう」を不用意に開けてしまったのだった。「秋鹿 霙もよう」は"危険な"酒だ。千枚通しで慎重に気を抜いていっても10分近くかけないと酒が吹き上げてくることがある。

そのとき,成田さんの様子を見るとなんと「ヤッター」というように喜んでいた。普通ならお客さんに酒がかかるのではと慌てふためくか、開けた店員を怒るところだが・・・・。しかし、子どものように喜んでいる成田さんの様子を見ていると、驚くべきことが起こった。店のあちこちから「その酒をくれ!」という声が飛び出したのだ。それまで、暗い雰囲気が支配していた店が、いっぺんに明るい雰囲気に支配され、笑い声が聞こえるようになった。「これが酒場だな」と私も明るい気持ちに包まれた。

酒販店によっては「笹吟」を厳しく評価しているところもあるのは知っているが、この一件以来「そんなことはどうでもいいじゃないか」と思っている。

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コメント(1)

大輔 Author Profile Page:

着々と、そして早くも第5回ですね。小田原の方角を見るとまだ気が遠くなるほど遠い気もしますが・・・本当にこれは偉大な「長征」ですね。いまのうちなら第一回から順番に体験していってもまだ追いつけるかもしれません。皆さん「各駅ツアー」いつやりましょうか?(笑)

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