小田急線各駅飲酒 第6回(番外編) 東北沢

東北沢は代々木上原と下北沢に挟まれた地味な駅だ。大きな商店街もなく急行も止まらない。しかし、この駅には私の大好きな店があった。「あった」と過去形で書いたのは、この連載で取り上げようと改めて取材に行ってみたら消えていたのだ。店の名は「バル・エンリケ」という。

ネットで検索して調べたら2年前に中目黒に移転している。2年間ご無沙汰していたのかと驚いたが、決して店にいやなことがあって行かなかったわけではない。一人で飲みに行くと4000〜5000円と単価が若干高かったのでNHK退職後生活のダウンサイジングを行っていたので行かなかっただけだ。2人で行ってワイン1本とニシンの酢漬けとパテとパンで済ませれば、計5000円、一人2500円ほどで済むのだが、この店によく一緒に行っていた人物の仕事が変わり、一緒に飲みに行けなくなってしまったのだ。

昨日、食べログのサイトから印刷した地図を手に、移転した店を訪ねてみた。開店時間の5時半に店を目指して歩いていくと、それらしき店の前でマスターが玄関前を掃除していた。「お久しぶりです」と挨拶すると、私を覚えていたらしく「本当に久しぶりだね」と驚いたような顔で答えてくれた。「掃除が終わるまでちょっと待っていて」と言われたので、近くの垣根のあたりに座って待った。店を見ると3階建ての細長い建物の1階が店舗。2・3階が住居になっているようだ。

しばらくすると、マスターから「中に入って」と言われたので中に入る。4人掛けのテーブルが2つとカウンター席が12席ほどある。男性の料理人1人と客席係1人がいる。しばらくするとこの日から働くらしい女性アルバイト2人がやってきた。これだけ雇えるということは繁盛しているのだろう。

メニューはワインと食べ物2種類。私はワインのことはよくわからないので、初めて行く店では一番安いワインを飲むことにしている。このことは作家の沢木耕太郎さんから教えられた。沢木さんは海外旅行の経験が豊富だが、いい店は必ず一番安いワインにリーズナブルなワインをメニューに載せているという。以前「バル・エンリケ」でワインを飲んだときも、訪問するたびに、安いワインから順番に飲んでいき5回目に美味しいワインに出会った。値段は2800円くらいだった。6回目に同じワインを頼むとマスターは大きくうなずいた。それ以降、客としての扱いも少し変わったように思う。新しい店のリストを見るとそのワインは無かった。一番安いワインは3100円。まずそれを頼んだ。


この店の料理で一番好きな「ニシンの酢漬け」を頼んだが、今の季節は「サンマの酢漬け」しかないとのこと。残念!サンマの酢漬け、野菜のパテ、アンチョビを盛り合わせたプレートと小エビのアルアヒ-ジョを頼む。サンマの酢漬けはニシンの酢漬けには及ばない。
パテは肉の方が美味しい。小エビのアルアヒ-ジョはエビの美味しさをしっかり出していた。お勘定は5400円。プレート3点盛りにしてもらったので考えていたよりは安い。

マスターと雑談すると東北沢では13年ほど営業していたとのこと、移転の理由ははっきりと聞けなかったが2年ほど前といえば、もつ鍋、ジンギスカンなどで、中目黒がまだブレイクしていた時期。お客の多いこの場所への移転を選んだのだろう。また来よう。

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コメント(4)

大輔 Author Profile Page:

東北沢で最高の飲み屋は原田芳雄邸だったかもしれませんね。でもこの「エンリケ」、今度中目黒で途中下車したくなりました。

東北沢近辺に「む」と「云う飲み屋があってよく行った記憶があります。そこが未だあれば行きたいと思っていますが未だありあすか?
あるとすればどこか教えてください。

のり Author Profile Page:

「む」はもう30年以上前になくなったはずです。その後のことはよく知りません

のり Author Profile Page:

酔っているとき書いたのか、この文章には一つ誤りがあります。「ニシンの酢漬け」とあるのは「イワシの酢漬け」です。申し訳ありません。

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