「1974年のサマークリスマス」を読んで

この書籍を手にした時の最初の感慨をどう言えば良いだろうか。

手に取って最初に思ったのは「こんなに分厚い単行本になったのか」ということ。
滑らかな手触り、ずっしりと重いその重量。
表紙カバーはブルーで、忘れもしない小説すばる連載第一回の冒頭に掲げられた林美雄さんの写真。42年前の8月25日に代々木公園で初めて見た、林さんの顔のクローズアップだ。

白い帯にはすっかり白髪になった久米宏さんの顔写真と言葉。
「この本は、林美雄の、そして僕たちの奮闘記です。」
目を閉じると42年前の出来事が洪水のように脳裏に押し寄せてきた。
この分厚い本にはたしかに「僕たちの奮闘」が詰まっている。

「僕たち」とは林美雄さんや久米宏さんら当時のTBSアナウンサーの方々であり、
パックインミュージックのリスナーだったパ聴連、荻大の友人たちであり、
ユーミンや石川セリら70年代の歌姫たちであり、
「歌う銀幕スター夢の狂宴」の関係者と出演者たちであり、
60年代と70年代を駆け抜けた多くの有名無名の人々のことでもある。

サブタイトルは「林美雄とパックインミュージックの時代」。
著者の柳沢健さんは膨大なインタビューと取材を重ね、時代の空気を見事に描き切った。
1970年代を語る書籍はこれからも出版されるだろうが、時代そのものを群像劇として活写したこの作品は、後に続く若者たちや研究者たちにとって必読の書となるだろう。

本文中の証言と証言の間に挟まれる著者の言葉は時に涙を誘い、
時には微笑を誘う。
そして万感の思いで読み終わった時に、あとがきに綴られた著者の最後の一言が胸に響いた。

「人の世ははかない。はかない世を、人は懸命に生きる。
本書は、懸命に生きた人々の小さな記録である。」

若かった「僕たち」は、きっと多くの過ちをも犯したに違いない。
だが、このたった2行の言葉によって、
この書籍に収められた「僕たちの奮闘」のすべてが許されたようにも感じた。

柳澤健さんに、心から感謝したい。








コメント(1)

ぬまべ Author Profile Page:

人の世ははかない。はかない世を、人は懸命に生きる。
本書は、懸命に生きた人々の小さな記録である。

「あとがき」を締めくくるこの言葉は、本書の成立に決定的な役割を果たした連載時の編集長、高橋秀明さんと、林美雄夫人文子さんの相次ぐ急逝を悼む文章に続けて、万感の思いから記された一節でした。
しかも、本書刊行からわずか二週間後には、「1974年のサマークリスマス」「歌う銀幕スター夢の狂宴」の出演者で、林パックのヒロインだった中川梨絵さんまでが亡くなられた。
そして本来なら柳澤さんのインタヴューに応えて、林さんの思い出を「真情あふるる軽薄さ」で熱く語ってくれたはずの原田芳雄さんも、菅原文太さんも、田中登監督も、高田純さんも、もはや鬼籍に入られてしまった。

実に、人の世ははかない――そう呟かずにいられません。

でも、だからこそ、あの四十年前の輝かしい出来事を、懐かしくもほろ苦い日々を、私たちのささやかな熱狂とときめきを、本書がつぶさに書き留めてくれたことに、胸の奥底からの嬉しさをこめ、感謝したいのです。

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